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令和

平成31年4月2日火曜日

 発表の間、新しい時代の扉が開かれた30年前の記憶と重ねた人は多かっただろう。平成に代わる新しい元号が「令和」と決まった。

 現存する国内最古の歌集「万葉集」の「初春の令月にして、気淑く風和らぎ・・・」から引用したという。「美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」との希望を込めた。昭和世代の人は「和」の文字の再登板に、驚きや感慨があったかもしれない。

 発表のスタイルは、平成を「踏襲」した。菅義偉官房長官が新元号の書かれた額を恭しく掲げる。前回は昭和天皇が崩御した直後発表。「平成おじさん」とのちに呼ばれた小渕恵三さんは、黒ネクタイの喪服姿だった。憲政初の事前公表となった今回は、やはり空気感が違った。

 改元があっても時代が急に変わるわけではない。それでも日本人は元号に特別な思いを抱く。応仁の乱や享保の改革といった歴史上の事案を認識し、昭和一桁や、平成の怪物などと口にする。確かに独特なつかみやすさがある。

 1300年以上続く元号。けれど庶民に定着したのは150年前の明治時代から。江戸時代以前は、頻繁に変わる元号は不便で、干支を使うことが多かった。有史以来、元号との関わりが深まっている現代人である。

「へいせい」から「れいわ」と柔らかな響きの日本語が続いていく。その名が新たな時代を体現できるよう、言霊の力を信じたい。

愛媛新聞 「地軸」より

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