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「論語と算盤」渋沢栄一 その4

「論語と算盤」渋沢栄一 その3

↑前回ブログのつづきです

(習慣について)

この習慣というのは、特に少年時代が大切であろうと思う。記憶というものを考えてみても、少年時代の若い頭脳に記憶したことは、老後になってもかなり頭の中に残っている。わたし自身、どんなときのことをよく記憶しているかといえば、やはり少年時代のことだ。中国の古典でも、歴史でも、少年のときに読んだことをもっともよく覚えている。最近ではいくら読んでも、読む先から内容を忘れてしまう。

そんな訳なので、習慣も少年時代がもっとも大切で、一度習慣となったら、それは身に染みついたものとして終世変わることがない。それどころか、幼少の頃から青年期までは、もっとも習慣が身につきやすい。だからこそ、この時期を逃さずよい習慣を身につけ、それを個性にまで高めたいものである。

私は青年時代に家出をして、天下を流浪し、比較的気ままな生活をしたことが習慣となってしまい、後々までその悪い癖が抜けなくて苦労した。ただし、日々悪い習慣を直したいという強い思いから、大部分はこれを直すことができたつもりである。悪いと知りながら改められないのは、自分に打ち勝とうとする心が足りないということだ。

また私の経験からいえば、習慣は老人になってもやはり重視しなければならないと考える。青年時代に身につけた悪い習慣でさえ、老後の今日になって、努力すれば改められるものなのだ。今日のように、日々新たな気持ちで社会に臨まなければならないとき、なおさら「自分に克つ」という心を持って身を引き締めていかなければならない。

 

現代語訳 「論語と算盤」 渋沢栄一 (訳)守屋淳 ちくま新書

 

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(Kazu)